紺野さんは十割そばがお好き

はてダ「後藤さんの耳はうさぎ耳」から引っ越してきました

2004年からワンフォーなモーニング娘。まで[3]

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2007年~2008年(指標が底を打った時期)

 

・公式動画サイト「Dohhh UP!」スタート

2007年初頭、ある日突然、ハロプロ動画をたくさん上げてGoogle AdSenseを貼っている動画サイトが現れました。

ファンが見たことのないコンサート動画があったこともあり、「これ、もしかして盗撮サイト…?(それにしては綺麗に撮れてるけど…)」などと心配されていましたが、実際には事務所お手製の公式動画サイトだったというオチでした。

この時点ではまだYouTube公式アカウントを芸能事務所が持つというのはメジャーではなかったように思います。だからこそ事務所も独自の動画サイトを立ち上げたのでしょうが、それにしても非公式盗撮サイトだと勘違いされてしまうようなもっさりデザインに、ハロプロだけならまだしも事務所関連全ての動画が混ざっていて、更に謎の電車動画も上がっているというなんともいえないごった煮感。アーティストごとにまとまったページもなく使い勝手も悪くて、非公式であってもYouTubeにPV動画が存在している状態で敢えてこの公式サイトの動画を選ぶのはちょっと……という状態でした。(笑)

とは言いつつ、罪悪感なくプロモーションビデオにリンクが張れるようになったのは間違いなく良かったですし、他社にさきがけてPVをフルで上げたりライブ動画を一部あげたりしてネットというメディアを存分に活用しようとしていたところは素晴らしかったと思います。現在の積極的なYouTube活用にも繋がる先進的な施策だったのではないでしょうか。

 

・ツッコミ役育成

2007年5月に当時のリーダー・最後の「黄金期」メンバーである吉澤ひとみが卒業、前後して8期メンバー(日本人1人・中国人2人)が加入した後、ミキティこと藤本美貴さんが脱退します。

ミキティはおそらく、率先して話す役、ボケ揃いのメンバーに分かりやすく突っ込む役を期待されていたはずですが*1、そのミキティが予定外に抜けて、歴代随一のトーク下手高橋愛が6代目リーダーとなってしまいます。(笑) モーニング娘。トーク改善が急務となりました。

特に、ミキティの代わりとなる人、です。モーニング娘。…といいますか、女性アイドルってだいたいボケ揃いなので、それを世間にわかりやすく繋ぐツッコミ・説明役が必要になります。せっかく育ったミキティをいい時期に失ってしまい、またこの役を育て直す事態になってしまいました。もちろん第一の候補はあのお方。後に8代目リーダーとなる道重さゆみさんです。

細かく追えばトークの役割がツッコミだけなわけはないのですが、アイドルグループのトーク面の最重要役はツッコミではないかと思います。そしてこの役を受け持つ人はメディア側からの信頼度が高い方が良いので、ただトーク練習をさせればいいという問題でもなく、ちゃんとマスメディア向けのアピールが必要になります。トークに落ちをつける際、メディア側が自然とそちらに誘導してくれる形に持っていくのが一番自然で楽だからです。

特にこの頃はメディア露出が限られていたので、人を限定して一点突破を図る必要があったのではないかと思います。そしてトークにおいて一点突破を図る場合、その役を受け持つのはこの世代ではもちろん道重さゆみであり、そして女性アイドルのキャラクターが一番伝わりやすいのはあの「行き過ぎたアイドルを演じる」形だろうなと思います。道重さんの場合、半分キャラで半分真実というハマり役でもありました。

ただ、この当時の道重さんは初めてのレギュラーラジオ番組が始まってまだ1年も経たない頃。すぐにテレビにというわけにはいかず、まずはレギュラーラジオを増やしてチャンスを待つ状態になります。*2


・リゾナントブルー・みかん新規

まだまだいろんな指標が落ちていた時期、2007年。そんな時期に、「黄金期」という一つの区切りのメンバーが全員抜けて、そのファンのうち、それなりに打撃になる数がここで抜けてしまいます*3。さらにベテラン2人離脱と新人3人追加がほぼ同時に起こったことで、上昇を続けていたコンサートのレベルが一旦落ちてしまいます。高橋リーダー初のモーニング娘。コンサートツアーは、先輩メンバーの在籍するユニット「美勇伝」が帯同してのツアーになりました。

しかし一方で、そういう変化の時期に入れ替わりに入ってくるファンの方もいらっしゃいました。メンバーが変わればファンも変わる。それはメンバーそのものの入れ替わりであっても、メンバーの技術的な変化であっても、内面的な変化であってもそうです。

2007年「みかん」2008年「リゾナント ブルー」リリース時期、そんな新しい世代のファンが見え始めます。これは前にも触れた通り、YouTube経由の人が多数を占める新世代でした。特に「リゾナント ブルー」は、この後数年たってメンバーが代替わりしてもまだ「この曲で衝撃を受けて」とファンになる方がいらっしゃるようです。これは「みんなが知ってるモーニング娘。(=黄金期)」とうまく対比させた魅力をアピールできている故かな、と思っています。

ただし、このリリース時の瞬間風速的に言えば、そう大きな変化にはなり得ませんでした。この点に関して「やっぱりこの曲調では売れないからだ」などと単純化して語られる方もいらっしゃいましたが、それはここまで何度か書いてきた通り、「この時点ではまだモーニング娘。が攻勢に転じるだけの準備が整っていなかった」ということだったと見ています。単純にシングル曲だけを振り返っても、この時点までの数年間の曲を並べてみたとき「結局何がやりたいの?」ということが見える状態にはなっていなかったですし、プロモーションも1曲・数ヶ月でできることには限りがあります。だから当時、曲の評判が売り上げなどにあまり反映されなかったのも当然の帰結、と感じていました。

一曲が「後から思えば転換点だった」ということはあっても、一曲で一発で売れることは……これも時にはあるかもしれませんが、一度ガツンと売れて下がってそこから盛り返そうという時には、これはあり得ないと思っています。モーニング娘。に関して言えば、有名なLOVEマシーンだってその前の活動によるモーニング娘。の浸透があり、売るためのLOVEマシーン周辺の周到な施策があって、番組企画ユニットである強みを活かしたメディア露出の多さがあっての結果であって、一発で苦労なく売れた訳ではないわけですから。

そして、その転換点がこの時のモーニング娘。においては「リゾナント ブルー」だったと感じています。

ハロモニ終了、紅白落選

「黄金期」の流れを汲む2004年頃はテレビに出るモーニング娘。を見るのがファンの主な『ヲタ活』で、それゆえにトークの上手い下手やリアクションの良さやキャラの濃さ*4で判断されるのが主流だったのは前述の通りです。

そういった見方がテレビ出演減少により徐々に減っていたわけですが、お昼のレギュラー番組「ハロモニ」の終了で*5とどめをさされた感がありました。

そして、逆にライブのレベル向上やダンスショットバージョンの商品化による「ライブパフォーマンス派」が増えていったのも前述の通りです。

元々ロックボーカリストオーディションで始まったモーニング娘。のファンには「歌唱力派」が常に存在していましたが、いわゆる「黄金期」付近はそれが全体数から見れば少数派になっていました。 また、その「歌唱力派」も決してトーク面を軽視していたわけではなかったので尚更です。

そんな中、歌唱力派が盛り返してきたのがこの時期です。少し違うのは、初期のモーニング娘。はあくまでボーカルグループだったのに対し、この頃以降は分かりやすさ・語りやすさからかダンスの方に軸足が移っていった感はあり、そのことについての歌唱派からの批判が見られることもありました。ただ、これに関しては完全にダンス重視になったわけでもなく、この時期以降も歌派とダンス派の親和性は比較的高かったと見ています。短期的にはともかく、最終的に目指す姿は近いという印象もありました。

そんなファンの変化と並行して、紅白で新曲を歌わせてもらえなくなり(2007年)、ついに2008年には落選します。こうしてマスメディア方向にアピールする場のない状態になると、そもそもそういった面でアピールすることに意義を見出さないファンも付くようになりました。事務所がこの時期になってようやく具体的なトーク対策に動き始めたのとは逆の現象が、ファンシーンでは起きていたということになります。新人メンバーが必死で先輩の歌・ダンスについていこうとしていた2003年頃に「歌なんか上手くてもアイドルには何の役にも立たないどころか邪魔なだけ」と言っていた派閥があったのとは対称的です。


横道に少しそれて、売れるには何が必要なのかと考えると、第一にはやはりなんらかの魅力が必要になると思います。ただ若くてかわいい女の子がいればそれでいいという説も存在しますが、そもそも魅力は一種類ではありません。「歌が上手ければ、ダンスが上手ければ売れる(売れるべきだ)」という、『プラチナ期』時代のモーニング娘。ファンがしばしば口にしていた言葉も極論であり幻想で*6、また、それが要らないという2003年頃の言葉も極論だったと考えています*7。まずは、「いい」と感じてもらえるための何かを持つこと。

そして第二には、そんな魅力をわかりやすく受け入れやすい形で表現する技術も必要です。前述の「歌の上手さが邪魔になる」と見られているのは結局ここの見せ方が下手になっているパターン*8なのではないかと思っています。

今のモーニング娘。トークやキャラ演出を磨く一方で『フォーメーションダンス』と分かりやすいキーワードを付けてダンスの技術面のこともアピールできていて、とてもバランスが良いと思います。合わせてファンの議論内容も揺り戻し、今は歌・ダンス・トークどれも大切にするような、いいバランスになっているように思います。


さて、横道から本来のところに戻ります。少し矛盾するような話ですが、この時期のモーニング娘。においては、バランス悪く歌とダンスの実力面にのみフォーカスするファン層が出てきたことが、対メディアアピールにおいてプラスに作用していったと感じています。

「今のモーニング娘。は、あなたたちマスメディアが過去のものとして扱い始めた“あのモーニング娘。”とは違う存在だ」*9 ということを、放っておいてもファンがアピールするようになり、そういった「(必ずしも正しくはないんだけど)分かりやすく受け入れやすい」言葉を、事務所側も、ネットを含むメディア側も、新しく入ってくるファン層も取り込み始めたからです。

そしておそらくこの「分かりやすさ」を獲得したことにより、これまで長年落ち続け、または横ばいを続けていた各種指標が底を打ち、2009年にはとうとうかすかな上昇を見せ始めることになります。


]へつづく

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*1:おそらく2005年の矢口さんもそうでした。矢口さん脱退までのミキティはまだその役目を果たせるようになっていなくて、当時はあまりツッコミは入れてなかったですし、矢口さん脱退後ツッコミを入れ始めてからもあまり押し引きがうまくなかった期間があったりしたんですよ

*2:そもそも道重さゆみの対メディア売り出しの手法は上層部の思惑とは食い違っていて、若手スタッフが上層部の目をかいくぐってやっていたという説もあります。(ちょっと口の軽い外部関係者さんの配信番組トークより。) このリークが正しいとすれば、この時点では対メディア戦略をスタートさせなかったというのもなんら不思議ではありません。お固いのが長所でもあり短所でもある事務所なので、こういった手法に上層部が難色を示すのも印象通りではあります。

*3:もちろん、すべての方が抜けてしまったわけではありません。

*4:というか、実質「キャラ演出の上手さ」。8代目リーダーの道重さんはこの実践のみでなく、後輩の指導も上手い方だと思います。Berryz工房カントリーガールズのももちこと嗣永桃子さんもこの種の方。

*5:実質、お昼時の1時間番組だった2007年春までで

*6:歌やダンスの善し悪しが全てを決める世界では、モーニング娘。の順位は今よりも下がるはずです。「踊りながら生歌で歌う」という特殊なジャンルにおいては一定の地位を得られるかもしれませんが。

*7:その魅力を魅力と感じる客が商売にできるだけの数確保できるのであればそれは十分な売りになり得ます。特に、一度それとは違う魅力で爆発的に売れているモーニング娘。においては、その時代とは違った魅力をアピールする上で「実力」はまたとない武器になる、というのがこの数年で得た実感です。また、「実力」ははっきり目で見て分かりやすく努力もしやすい指標なので、特にメディア的な指標が下向きであったり不安定であったりする時期…って、ほとんど常時そうだと思うのですが、そういう時に精神的支柱としても働くのではないかと感じています。もちろん、努力しても歌が下手なメンバーのケアなど注意すべき点もあるのですが。

*8:或いは、声量はあるけど表現力がないなどの技術バランスが悪いパターン、もしくは上手いといってもまだある壁を突破しきれていないため説得力に欠ける、まだ未熟ゆえ…なパターンも

*9:今現在のモーニング娘。においては、おそらくこれをもっと分かりやすくするためのキーワードとして年号「’14」「’15」を導入したことがプラスに作用しているようです。