紺野さんは十割そばがお好き

はてダ「後藤さんの耳はうさぎ耳」から引っ越してきました

シンデレラと継母たちの心理

シンデレラと継母たちが何事もなかったかのように結婚式で笑い合ってることについて疑問を感じる方がけっこういらっしゃるみたいですが、私は「おとぎ話だから」とか「舞台だから」というのとは別に、心理として納得しているところがあります。


まずシンデレラなんですが、彼女はジョイ17歳とポーシャ16歳をお姉さまと言ってることからして15歳以下ですよね。で、たぶん何年も前に母を亡くし、そこに新しい母と姉たちがやってきて、父も亡くしてしまう。いじめられ歴は多分1〜3年ぐらいじゃないかと思います。良くて14〜15歳の1年間、悪い方に考えると11〜14歳の3年間ってとこでしょうか。

いじめられて何を考えるかというのは人それぞれだと思いますが、その間ずっと「生まれつきずるがしこいんだね」「人前じゃニコニコして影で何をしてるのかわかりゃしないわよ」「私たちと違って、お腹の中なんか真っ黒に決まってるわよ」という言葉を投げられていたと考えると、一方では怖い・悲しいという感情が起こり、他方では怒りが生まれると思います。しかしこのうち、後者の「ムカつくイラつくやり返したい」という心理は、継母たちの言う「影で何をしてるか」「お腹の中真っ黒」に当てはまってしまいます。それを避けるにはどうすればいいか? 自分の中の怒りの感情を、怖い・悲しいという感情で塗り潰してしまえばいい。幼くて相手が複数で家の中に頼れる人がいないという状況であれば尚更、自分の身を守るためひたすらいい子でいる必要が生じます。ちょっとでも疑われればさらなるいじめが待っているからです。

さらに、シンデレラは心優しい両親の元「何より、すべての物を慈しみ愛することよ!」「愛することが出来なくちゃダメ」というポリシーで育てられた子供です。

多分シンデレラの価値観では、継母たちは見下すべき精神の持ち主でしょう。でもそこで見下すようでは自分も同じ穴の狢。彼女たちは「すべての物を慈しみ愛する」ことのできない人たちですが、シンデレラ自身は継母たちを慈しみ愛する必要があります。それが「継母とは違って」素晴らしかった母の教えであり、「継母たちとは違う」自分の価値観であり、日々いくら罵倒されようともボロを着せられようとも、シンデレラを継母たちよりも上に位置づけてくれる根拠になるからです。

だから、シンデレラは結婚式でも決して継母たちに意地悪な態度なんて取れないんです。彼女を支えているのはまさにその「すべての物を慈しみ愛する」という価値観だからです。しかもそうして生きていた自分だけを妖精の女王が助けてくれたわけですから、尚更その価値観は強化されているに違いありません。突然継母たちへの態度を変えることは、それまでの自分の生き方を否定することにも繋がります。……それにシンデレラは相当お父さんのことが好きだったようなので、お父さんの選んだ人を悪く言いたくないという意識も働いていたんじゃないか、とも思ったり。


継母たちの側はどうなのかというと、これは単にシンデレラの態度に呼応していると見ていいのではないかと思います。いじめていた時にはそれに呼応してシンデレラがどんどんいい子になっていっていたわけですが、一方で妄想族(w のシンデレラに乗せられたり振り回されたりする可愛さも持ってる継母たち。いくらいじめてもへこたれないちっこいシンデレラにイラつき半分呆れ半分みたいなw

そんな調子なので、シンデレラの立場が強くなるにあたり、継母たちはあっさり掌を返したと思われます。そこで恐らくシンデレラはあっさり(少なくとも表面的には)彼女たちを受け入れた。まあちょっとしたおちゃめな仕返しぐらいはしたかもしれませんが、おちゃめと思えるレベルでないとシンデレラ自身の価値観が許しません。それに、一緒に住んでいる家族のことですから、いっそ好きになってしまった方が楽であり、それでも愛されていると信じた方が救われるという考え方もあるんじゃないかなと。なんせれいなに「あんなガリガリ」と言われるようなか弱い女の子ですから。


私の解釈はこんな感じです。

(でも、シンデレラが大人になって自分なりの価値観を確立した後は、もしかしたら怖いことになるかもね……w)